その脈の乱れ、放置していませんか?
こんにちは。院長の大口志央です。初めての投稿です。
うちは心疾患に特化したクリニックという部分もあり、ここでは心臓に関する内容を取り上げていきたいと思っています。第1回目は私が心疾患の中でも特に専門としていた不整脈の1つである心房細動について。
一言で不整脈と言っても、脈が速くなるもの、遅くなるもの、乱れるもの、と様々です。心房細動は簡単に言うと、脈が乱れるタイプの不整脈であり、本来、命令を出すべき所(洞結節といいます)とは異なる箇所から異常な興奮が起き、それをきっかけに心房全体が震えて止まらなくなってしまう病気です。心房と心室の間には、上から来た興奮を一旦調整する役割を担う部分があり、震えがそのまま下の心室に伝わるという事はないのですが、規則正しい興奮ではないのでリズムは不規則になってしまいます。百聞は一見にしかず、言葉で説明するより下のシェーマを見てもらった方がわかりやすいかもしれません。
これによって、動悸、めまい、胸の違和感、息切れなどを生じますが、厄介な事に全く無症状で本人も気付かないまま過ごされている事もあるんですね。症状が無いならかえっていいじゃないかと思われる方もいると思いますが、心房細動に伴うリスクは一緒です。逆に無症状だと発見が遅れたり放置したりする事で病気や合併症に対する対応が遅れてしまうと考えられています。
例えば心房細動の合併症の代表的なものに脳梗塞があります。実は心房が震えた状態というのは非常に血液の循環が悪く、中に血の塊(血栓)ができてしまう事があります。これが何かの拍子に心臓から離れて動脈の方に飛んでしまうと、大事な臓器の血管に詰まって塞栓症を起こすんですね。これが脳の方に飛んで詰まると脳梗塞(心原性脳塞栓症といいます)になる訳です。血栓は比較的 血管の中枢側で詰まる事が多いため、動脈硬化が原因で起こるラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞よりも重篤になる事が知られています。予防のためには血栓を予防する薬(抗凝固薬)の服用が必要になります。
また心房細動をそのまま放置していると、段々と心臓自体が傷んできて心不全の進行につながります。心房細動自体も進んでしまい元の調律に戻らなくなってしまいます。そうなると息切れ、むくみ、倦怠感などの症状が遅れて出てきて、時間と共に健康寿命がどんどん損なわれてしまうんですね。今はカテーテル治療で根治が見込める方法があるので、見つけたらできるだけ早期に治してしまった方が将来のためには良いと思います。
当院では、不整脈や心房細動の早期発見、早期治療のため様々な取り組みを行なっております。例えば、24時間型の長時間心電図は2台を取り揃えており動悸や脈の乱れを訴える方々の原因究明を率先して行なっていますし、今年の夏には無症候性心房細動に対してAI(人工知能)による自動解析を使った1週間型の長時間心電図の導入を検討中です。皆様がよく使われているアップルウォッチにも心電図や心房細動を検知する機能が備わっており、そこで得られた波形を確認、診断する場も外来に設けております。
*1週間型長時間心電図(ATパッチ) *24時間型長時間心電図(ホルター心電図)
脈の乱れが気になる時には、どうぞお気軽に当院をご利用ください。